キャッチーな曲の作り方

「キャッチーに」という発注に、何をどう作れば応えられるのか。お手本の曲を聴きながら、覚えてもらう仕組みを確かめます。

楽曲コンペ 募集要項(抜粋)
新曲 候補募集※授業用の架空の発注書
プロデューサーより
今回は、とにかくキャッチーな曲をお願いします。一度聴いただけで覚えられて、ファンがみんなで口ずさめるサビが欲しい。イントロから一瞬で「あの曲だ」と分かるように。TikTok でバズりそうな曲が理想です。
楽曲仕様
ワンコーラス(イントロ〜1番のサビ)のデモで可。メロディと歌詞を入れてください。

※授業用に作った架空の発注書です。実在の企業・団体・楽曲とは関係ありません。

この注文に、どう応える?

発注書の「キャッチー」とは、覚えてもらう仕組みを作ること。お手本の曲で6つの仕組みを聴き、作るときのコツを確かめてから、最後に課題に取り組みます。

覚えてもらう仕組み6つの仕組みを、お手本の曲で聴く

1-1サビのくり返し

なとり「Serenade」

サビのメロディをくり返すと、分かりやすい。

キャッチーな曲を作るときの王道の手法です。

1-2同じ音の連打

サカナクション「夜の踊り子」

メロディが単純なほど、キャッチーさが引き立つ。

サビのメロディが、ずっと同じ音を連打していて、しかもくり返し。

1-3キラーフレーズ

Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」

歌詞の冒頭の「ケセラセラ」がキラーフレーズとなり、曲を印象づけている。

メロディ自体はくり返しではなく、キャッチーではありません。それでも、この一言で曲を覚えてもらえます。

1-4サビ始まり

アイナ・ジ・エンド「革命道中 - On The Way」

イントロにサビを持ってくると、1番のサビは2度目に聴くことになる。

一度聴いたメロディは、すでに知っているメロディ。だからキャッチーに感じやすくなります。

サビ始まりでは、サビのメロディをイントロで先に聴くので、1番のサビは2回目になる。
応用

AメロやBメロにサビのモチーフを一瞬入れたり、リズムを似たものにしたりすると、サビに「聴いたことがある感じ」を持たせられます。

1-5サウンドのサビ

ILLIT「It's Me」

サビは歌ではなくサウンドだけ。そのメロディと音色がキャッチー。

歌メロ以外でも、EDMのドロップのような手法でキャッチーさを出せます。主に K-POP・EDM・ボカロで使われる手法です。

1-6言葉のくり返し

ATEEZ「BAD」

サビは「bad」という言葉のくり返し。メロディというよりセリフのパターン。

ILLIT「It's Me」のようなドロップのサウンドと一緒に使われることも多い手法です。

研究

アメリカのヒットチャートでは、サビの歌詞をくり返す曲ほど1位まで行っていました。1 ただし「くり返したから売れた」とまでは言えません。キラーフレーズ(タイトルにするのも手)を、サビで何度か歌ってみましょう。

逆に、キャッチーではない曲くり返さず、長い物語を紡ぐ

2-1長い物語のようなメロディ

Mrs. GREEN APPLE「lulu.」
FictionJunction「彼方」

長い物語を紡ぐようなメロディにすると、壮大で説得力があり、感動させる曲になる。

メロディのくり返しが少なく、覚えやすい言葉もありません。ただし、メロディが非常に壮大です。lulu. はコード進行もサビ全体で非常に大きな流れになっていて、感動をより引き立てています。

2-2壮大な中でもキャッチー寄りにする

tuki.「晩餐歌」

コードをシンプルにして短い間隔でループさせると、壮大な中でもキャッチー寄りになる。

メロディのくり返しは一度しかありませんが、コードの移り変わりが早く、しかもループしています。

注意

キャッチーにすればするほど、中身のない曲に仕上がることが多くなります。中身がないのは悪いことではなく、何も考えずに楽しめる曲になりやすい、ということです。

作るときのコツ課題にそのまま使える5つ

3-1リズムから作る

大事なのは、音程の上下よりリズム。

作る順番。先にリズムだけで確かめてから、音程を考える。

一度リズムだけ(clap のサンプルなど)でキャッチーなリズムができているかを確認し、その後に音程を考えるとやりやすくなります。ドラムとの相性も考えるとなおよし。

3-2コードの移り変わりを短くする

コードが短く変わるほど、スケールでメロディを作れる。だから自由にくり返せる。

コードの間隔(例)。短い間隔でループするほど、同じメロディをくり返しやすい。

メロディを比較的自由に動かせるので、コードにぶつかることなく、自由にメロディをくり返せます。

3-3イントロは短めに

アメリカのヒット曲では、歌が入るまでの前奏が20秒あまりから5秒くらいに縮んだ。2

アメリカのヒット曲で、歌が入るまでの前奏の長さ。

イントロを長くしたいときは、サビのメロディを先に聴かせる(1-4 サビ始まり)のも手です。

3-4くり返す。ただし少しだけ変える

なとり「Serenade」

くり返しは、変化と組み合わせて初めて効く。3

サビのくり返しを聴きながら、どこが同じで、どこが少し変わるかに耳を向けてみましょう。

たとえば、最後のくり返しだけ語尾の音を変える。

くり返しを足すだけで、初めて聴く曲でも「楽しい」「面白い」と感じられやすくなります。4 ただし、集中して聴いている人には、くり返しすぎると飽きられます。5

3-5メロディの形はありふれていてよい

頭から離れない曲のメロディは、上がって下がる山の形が多い。6

メロディの上がり下がりの形。ありふれた山の形でよい。

めずらしい形を探すより、リズムとくり返しで勝負しましょう。

出典

  1. Nunes, J. C., Ordanini, A., & Valsesia, F. (2015). The power of repetition: Repetitive lyrics in a song increase processing fluency and drive market success. Journal of Consumer Psychology, 25(2), 187–199. doi.org/10.1016/j.jcps.2014.12.004
  2. Léveillé Gauvin, H. (2018). Drawing listener attention in popular music: Testing five musical features arising from the theory of attention economy. Musicae Scientiae, 22(3), 291–304. doi.org/10.1177/1029864917698010(秒数は The Ohio State University の発表 2017 による:news.osu.edu)
  3. Burns, G. (1987). A typology of ‘hooks’ in popular records. Popular Music, 6(1), 1–20. doi.org/10.1017/S0261143000006577
  4. Margulis, E. H. (2013). Aesthetic responses to repetition in unfamiliar music. Empirical Studies of the Arts, 31(1), 45–57. doi.org/10.2190/EM.31.1.c
  5. Szpunar, K. K., Schellenberg, E. G., & Pliner, P. (2004). Liking and memory for musical stimuli as a function of exposure. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 30(2), 370–381. doi.org/10.1037/0278-7393.30.2.370
  6. Jakubowski, K., Finkel, S., Stewart, L., & Müllensiefen, D. (2017). Dissecting an earworm: Melodic features and song popularity predict involuntary musical imagery. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 11(2), 122–135. doi.org/10.1037/aca0000090