キャッチーな曲の作り方

楽曲コンペ 募集要項(抜粋)新曲 候補募集
プロデューサーより
今回は、とにかくキャッチーな曲をお願いします。一度聴いただけで覚えられて、ファンがみんなで口ずさめるサビが欲しい。イントロから一瞬で「あの曲だ」と分かるように。
楽曲仕様
ワンコーラス(イントロ〜1番のサビ)のデモで可。メロディと歌詞を入れてください。

※授業用に作った架空の発注書です。実在の企業・団体・楽曲とは関係ありません。

この注文に、どう応える?

発注書の「キャッチー」とは、覚えてもらう仕組みを作ることです。お手本の曲を聴きながら6つの仕組みと作るときのコツを確認し、最後に課題に取り組みます。

第1章覚えてもらう仕組み

1-1サビのくり返し

なとり「Serenade」

サビのメロディがくり返しで、分かりやすい。

キャッチーな曲を作るときの王道の手法です。

1-2同じ音の連打

サカナクション「夜の踊り子」

サビのメロディが、ずっと同じ音を連打していて、しかもくり返し。

メロディの単純さが、キャッチーさをより引き立てています。

1-3キラーフレーズ

Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」

メロディ自体はくり返しではなく、キャッチーではありません。

ただ、歌詞の冒頭の「ケセラセラ」というフレーズがキラーフレーズとなり、この曲を印象づけています。

1-4サビ始まり

アイナ・ジ・エンド「革命道中 - On The Way」

イントロにサビのメロディを持ってくる(サビ始まり)と、1番のサビは2度目に聴くことになります。

一度聴いたメロディは、すでに知っているメロディなので、キャッチーに感じやすくなります。

曲の構成の並び。色の付いた所でサビのメロディが聞こえる。
応用

AメロやBメロにサビのモチーフを一瞬入れたり、リズムを似たものにしたりすると、サビに「聴いたことがある感じ」を持たせられます。

1-5サウンドのサビ

ILLIT「It's Me」

サビは歌ではなくサウンドのみ。そのサウンドのメロディと音色がキャッチーです。

このように歌メロ以外でも、EDMのドロップのような手法でキャッチーさを出すことができます。主に K-POP・EDM・ボカロで使われる手法です。

1-6言葉のくり返し

ATEEZ「BAD」

サビは「bad」という言葉のくり返しで、とてもシンプル。メロディというよりセリフのパターンです。

ILLIT「It's Me」のようなドロップのサウンドと一緒に使われることも多い手法です。

研究

アメリカのヒットチャートでは、サビの歌詞をくり返す曲ほど1位まで行っていました。1 ただし「くり返したから売れた」とまでは言えません。キラーフレーズ(タイトルにするのも手)を、サビで何度か歌ってみましょう。

第2章逆に、キャッチーではない曲

2-1長い物語のようなメロディ

Mrs. GREEN APPLE「lulu.」
FictionJunction「彼方」

メロディのくり返しが少なく、覚えやすい言葉もありません。ただし、メロディが非常に壮大です。

このように長い物語を紡ぐようなメロディにすると、壮大で説得力があり、感動させる曲を作れます。lulu. はコード進行もサビ全体で非常に大きな流れになっていて、感動をより引き立てています。

2-2壮大な中でもキャッチー寄りにする

tuki.「晩餐歌」

メロディのくり返しは一度しかありませんが、コードの移り変わりが早く、しかもループしています。

コードの流れをシンプルにし、短い間隔でループさせると、壮大な中でもキャッチー寄りに仕上げられます。

注意

キャッチーにすればするほど、中身のない曲に仕上がることが多くなります。中身がないのは悪いことではなく、何も考えずに楽しめる曲になりやすい、ということです。

第3章作るときのコツ

3-1リズムから作る

キャッチーなメロディを作るうえで重要なのは、音程の上下よりもリズムです。

作る順番。先にリズムだけで確かめてから、音程を考える。

一度リズムだけ(clap のサンプルなど)でキャッチーなリズムができているかを確認し、その後に音程を考えるとやりやすくなります。ドラムとの相性も考えるとなおよし。

3-2コードの移り変わりを短くする

コードの移り変わりが短いほうが、コードに影響されず、スケールでメロディを作れる状態になりやすくなります。

コードの移り変わりの間隔(例)。短いほど、メロディをくり返しやすい。

メロディを比較的自由に動かせるので、コードにぶつかることなく、自由にメロディをくり返せます。

3-3イントロは短めに

アメリカのヒット曲では、歌が入るまでの前奏が20秒あまりから5秒くらいに縮みました。2

アメリカのヒット曲で、歌が入るまでの前奏の長さ。

イントロを長くしたいときは、サビのメロディを先に聴かせる(1-4 サビ始まり)のも手です。

3-4くり返す。ただし少しだけ変える

くり返しは、変化と組み合わせて初めて効きます。3

たとえば、最後のくり返しだけ語尾の音を変える。

くり返しを足すだけで、初めて聴く曲でも「楽しい」「面白い」と感じられやすくなります。4 ただし、集中して聴いている人には、くり返しすぎると飽きられます。5

3-5メロディの形はありふれていてよい

頭から離れない曲のメロディは、上がって下がる山の形が多いことが分かっています。6

メロディの上がり下がりの形。ありふれた山の形でよい。

めずらしい形を探すより、リズムとくり返しで勝負しましょう。

第4章課題

キャッチーな曲を作ってくる

作る範囲
ワンコーラスで構いませんが、イントロから1番のサビまで作ること。
入れる物
メロディと歌詞をつけること。

出す前のチェック

出典

  1. Nunes, J. C., Ordanini, A., & Valsesia, F. (2015). The power of repetition: Repetitive lyrics in a song increase processing fluency and drive market success. Journal of Consumer Psychology, 25(2), 187–199. doi.org/10.1016/j.jcps.2014.12.004
  2. Léveillé Gauvin, H. (2018). Drawing listener attention in popular music: Testing five musical features arising from the theory of attention economy. Musicae Scientiae, 22(3), 291–304. doi.org/10.1177/1029864917698010(秒数は The Ohio State University の発表 2017 による:news.osu.edu)
  3. Burns, G. (1987). A typology of ‘hooks’ in popular records. Popular Music, 6(1), 1–20. doi.org/10.1017/S0261143000006577
  4. Margulis, E. H. (2013). Aesthetic responses to repetition in unfamiliar music. Empirical Studies of the Arts, 31(1), 45–57. doi.org/10.2190/EM.31.1.c
  5. Szpunar, K. K., Schellenberg, E. G., & Pliner, P. (2004). Liking and memory for musical stimuli as a function of exposure. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 30(2), 370–381. doi.org/10.1037/0278-7393.30.2.370
  6. Jakubowski, K., Finkel, S., Stewart, L., & Müllensiefen, D. (2017). Dissecting an earworm: Melodic features and song popularity predict involuntary musical imagery. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 11(2), 122–135. doi.org/10.1037/aca0000090